『秒速5センチメートル』主題歌＆挿入歌｜音楽が描く切ない世界観

新海誠監督の名作アニメ『秒速5センチメートル』（2007年）は、切なさと余韻を残す音楽によって、その詩的世界観をより深く心に刻みました。

そして2025年、実写映画が公開されるにあたり、主題歌には米津玄師さんの「1991」、劇中歌には山崎まさよしさんによるリマスター版「One more time, One more chance」が採用されました。

本記事では、アニメ版と実写版における音楽の役割と魅力、そしてその違いについて徹底解説します。

1. アニメ版『秒速5センチメートル』音楽の魅力

2007年に公開されたアニメ版『秒速5センチメートル』は、映像だけでなく音楽によっても切なさと余韻を深く刻み込んだ作品です。

主題歌とBGMの両方が、物語の“届かない想い”をより鮮明に浮かび上がらせています。

ここでは、主題歌と挿入歌の魅力について解説します。

1-1. 主題歌「One more time, One more chance」とその象徴性

アニメ版のエンディングを飾ったのは、山崎まさよしさんの「One more time, One more chance」です。

1997年にリリースされた楽曲を、10年後に映画主題歌として起用したことで、新たな意味合いが付与されました。

失われた恋を探し続ける歌詞が、遠野貴樹と篠原明里のすれ違う物語と重なり、観客の胸を強く締め付けます。

この曲は映画の余韻そのものを体現する象徴的存在といえるでしょう。

1-2. 挿入歌・BGM：天門が描く余白と感情

劇中のBGMを担当したのは作曲家・天門です。

ピアノやシンセサウンドを基調とした旋律は、「静寂」と「余白」を巧みに表現し、観客に登場人物の心情を想像させます。

特に「桜花抄」や「コスモナウト」の場面では、映像の美しさを引き立てつつも決して出しゃばらない音楽が、切なさを倍増させています。

アニメ版の音楽は、まさに“映像と共に呼吸する”存在だったのです。

2. 実写版『秒速5センチメートル』音楽設定の変化

2025年に公開される実写版『秒速5センチメートル』では、音楽面でも大きな刷新が行われました。

主題歌には米津玄師さんの新曲「1991」が起用され、劇中歌としては山崎まさよしさんの「One more time, One more chance」のリマスター版が採用されています。

アニメ版と同じテーマを踏襲しつつ、新たな時代性を反映した音楽構成となっているのが特徴です。

2-1. 主題歌「1991」—米津玄師による新たな表現

米津玄師さんが書き下ろした「1991」は、「時間の経過と失われたものへの想い」をテーマに制作された楽曲です。

静かに積み重なる旋律と深い歌詞が、貴樹の“止まった心”を象徴するとも言われています。

観客に新しい“秒速”の世界観を感じさせる、極めて象徴的な一曲です。

2-2. 劇中歌としての「One more time, One more chance Remaster」の位置づけ

アニメ版でエンディングを飾った「One more time, One more chance」は、実写版では劇中歌として再登場します。

新たにリマスターされた音源は、当時の切なさを残しつつも現代的な響きへと進化しています。

この選曲によって、アニメ版ファンへの敬意と、実写版としての新しさが同時に表現されているのです。

懐かしさと新鮮さが交錯する音楽体験は、実写版ならではの大きな見どころといえるでしょう。

3. 音楽が描く“切ない世界観”—アニメ vs 実写

『秒速5センチメートル』は、音楽の存在によってその切なさが倍増する作品です。

アニメ版と実写版では、それぞれの時代背景や制作意図に応じて音楽の役割が変化しています。

音楽が物語にどう寄り添い、世界観を形づくっているかを比較してみましょう。

3-1. 歌詞・楽曲による時間と距離の表現

アニメ版で使われた「One more time, One more chance」は、“もう一度君に会いたい”という普遍的な想いを描いています。

その歌詞は、遠野貴樹と篠原明里の物語と重なり、観客に自らの過去の記憶を呼び起こさせました。

一方、実写版の主題歌「1991」は、失われた時間や立ち止まった心を表現することで、より現代的な解釈を加えています。

3-2. 実写化で“音楽と映像の融合”がもたらす感情の変化

アニメ版では、天門の繊細なBGMと映像が一体となり、余白を残すことで観客に想像させる力がありました。

対して実写版では、役者の演技や現実の風景と音楽が直接結びつくことで、感情がストレートに伝わるようになっています。

つまり、アニメは「余韻で心を震わせる音楽」、実写は「リアルな感情に寄り添う音楽」という違いがあるのです。

両者を比べることで、同じ物語が時代や表現方法によって異なる響きを持つことが理解できます。

音楽の力が『秒速5センチメートル』という作品の普遍性をさらに高めているのです。

4. まとめ：音楽と共に再び紡がれる“秒速”の物語

『秒速5センチメートル』は、アニメ版から実写版へと形を変えながらも、音楽によって支えられ続けています。

アニメでは「One more time, One more chance」と天門のBGMが切なさを象徴しました。

そして実写版では、米津玄師さんの「1991」とリマスター版「One more time, One more chance」が新しい世界観を構築しています。

どちらの作品も、音楽を通じて“時間と距離に翻弄される恋”という普遍的テーマを描き出しました。

アニメが観客に余韻を託したのに対し、実写は役者の存在感と音楽の融合で感情をダイレクトに届けます。

両者の違いを知ることで、『秒速5センチメートル』が音楽と共に歩んできた軌跡をより深く理解できるでしょう。

2025年の公開に向けて、再び音楽が“秒速”の世界を紡ぎ直す瞬間が訪れます。

観客一人ひとりの心に重なる物語と旋律を、ぜひ劇場で体感してみてください。