この記事のまとめ
- 『笑う男』は音楽で感情を語る作品
- 名曲「The Smile Man」は主人公の心情を象徴
- 演者ごとの解釈で印象が異なる
- 映像版では音響・演出に新たな魅力が加わる
韓国ミュージカル『笑う男』は、ヴィクトル・ユゴー原作の物語に加えて、重厚で美しい楽曲群が高く評価されている作品です。
なかでも主人公グウィンプレンが歌う「The Smile Man」や、ヒロイン・デアとのデュエット曲など、心に残る名曲の数々が観客を魅了します。
この記事では、代表的な楽曲の解説に加えて、舞台版とON SCREEN(映像版)の演出や音響の違いにも触れながら、音楽の魅力を多角的に掘り下げていきます。
『笑う男』を彩る音楽の世界観
韓国ミュージカル『笑う男』は、音楽の力で感情の機微を伝える、極めて音楽主導型の舞台作品です。
作曲を手がけたのは、ブロードウェイでも活躍するフランク・ワイルドホーン。
彼のドラマティックで美旋律なスコアが、ヴィクトル・ユゴー原作の重厚な世界観に見事にマッチしています。
作曲家と音楽スタイルについて
ワイルドホーンは『ジキル&ハイド』や『スカーレット・ピンパーネル』などで知られる作曲家で、クラシック・ロック・オペラを融合させたような音楽性が特徴です。
『笑う男』でも、彼ならではの重厚なストリングスとエモーショナルな旋律が物語をリードし、セリフでは描ききれないキャラクターの内面を音で表現しています。
ジャンルを超えたドラマティックな構成
楽曲はバラードからアップテンポなナンバー、群衆による重唱まで、1曲ごとに強い物語性を持っています。
例えば、グウィンプレンの内面をえぐる「The Smile Man」、デアとの切なく美しいデュエット、政治的緊迫感を表す議会の場面など、それぞれがストーリーの“転換点”としての役割を果たしています。
まさに“歌で観せるドラマ”といえる構成であり、ミュージカルであることの必然性が感じられる作品です。
代表曲①:「The Smile Man」について
『笑う男』を代表する楽曲「The Smile Man」は、主人公グウィンプレンの心の叫びを映し出すソロ曲です。
ミュージカル全体の中でも屈指の名曲とされ、観客の心を深く揺さぶります。
この曲は、彼の“笑顔”に隠された絶望と葛藤を、壮大な旋律とともに描いています。
歌詞に込められた“笑顔”の苦しみ
「The Smile Man」の歌詞には、“笑っているように見える顔が、どれほど泣いているか”という核心的テーマが表れています。
彼は自分を笑いものにする観客に向かって、「これは仮面だ」「これは自分ではない」と訴えるように歌います。
メロディは静けさから始まり、徐々に情熱を帯び、怒りや悲しみへと爆発していく構成。
そのクライマックスでは、観る者も思わず息を呑むほどのエモーショナルな高まりを感じさせます。
演者による歌唱の違い(ジュンス/スホ/パク・ガンヒョン)
この曲は複数のキャストによって歌われており、それぞれの個性がくっきりと浮かび上がる楽曲でもあります。
- キム・ジュンスは、感情の波を激しく表現するタイプで、声の張りとビブラートが圧倒的。ラストに向けての“爆発力”が特徴です。
- スホ(EXO)は、より内省的で静かな語り口が印象的。痛みを抑え込むような繊細な表現が観る者に余韻を残します。
- パク・ガンヒョンは、技術と感情のバランスが取れた歌唱で、安定感とドラマ性を両立。初心者にも届きやすい表現です。
同じ楽曲でありながら、演者によって“別の人生”が浮かび上がるような魅力がある──それが「The Smile Man」の奥深さです。
代表曲②:デアとのデュエット曲
グウィンプレンとデアが歌うデュエット曲は、本作で最もピュアで美しい瞬間のひとつです。
“見えないもの”と“見せたくないもの”を抱えた2人が、心を通わせる場面として大切に描かれています。
タイトルは公表されていませんが、「I Can See You」「Only You Can See Me」のような歌詞が繰り返される構成です。
盲目の愛を描いた純粋な対話
デアは盲目でありながら、グウィンプレンの“真実の姿”を見ています。
この楽曲では、互いの欠落や痛みを理解し、愛し合うというテーマが、優しい旋律とともに表現されます。
視覚ではなく、心で相手を“見る”という愛の形に、多くの観客が心を動かされます。
映像版で感じられる感情の“間”
舞台版でも感動的な場面ですが、ON SCREEN(映像版)ではカメラワークにより、2人の表情や手の動きまでが繊細に描写されます。
舞台では距離があるため見逃してしまいがちな、目を見つめ合う“間”や、呼吸のタイミングがより明確に伝わり、感情の深みが倍増します。
このデュエット曲は、“心と心でしか届かない愛”を音楽で表現した名シーンといえるでしょう。
その他の印象的な楽曲と使われ方
『笑う男』は、「The Smile Man」やデュエット曲以外にも、物語の深みを演出する印象的な楽曲が多数存在します。
それぞれの場面に感情やテーマを添える音楽の力が、本作の魅力をさらに高めています。
ここでは、特に注目すべき楽曲とその使われ方を紹介します。
ウルシュスのソロ、群衆曲、議会の場面など
ウルシュスが歌うソロ曲は、親としての葛藤や愛情を描いた名シーンのひとつ。
威厳ある低音と語り口のメロディが、父親としての誇りと悲しみを同時に表現しています。
また、貴族や群衆によるアンサンブルは、社会の冷酷さと集団心理を浮き彫りにします。
特に議会のシーンでは、緊張感あるオーケストレーションが言葉以上に政治の空虚さを伝えます。
場面転換と音楽のシンクロ演出
『笑う男』は、楽曲単体の美しさだけでなく、シーンごとの転換と音楽の“間”の使い方にも秀逸さがあります。
静寂から音楽が立ち上がる瞬間や、照明と音が重なるタイミングなど、“音と演出の融合”が非常に精密に設計されています。
このような演出によって、楽曲が単なるBGMではなく、物語の“語り部”として機能しているのです。
舞台版とON SCREEN(映像版)の違い
『笑う男』の音楽は、劇場の生演奏と映画館での上映で、それぞれ異なる体験を生み出します。
ON SCREEN版は、映像・音響ともにシネマ用に最適化されており、音楽の聞こえ方や印象も大きく変わるのが特徴です。
ここではその違いを2つの視点から見ていきます。
音響の臨場感とミックスの変化
劇場では、オーケストラピットからの“生音”と劇場音響によって、音楽が身体全体に響いてきます。
対してON SCREEN版では、録音された音源に合わせてミックス処理が施されており、細部の音がよりクリアに聞こえるのが利点です。
特にハーモニーや弦楽器の繊細な音、演者の息遣いまでも拾えるのが映像版ならではの魅力です。
カメラワークで際立つ音楽のニュアンス
ON SCREENでは、音楽に合わせたカット割りや表情のアップが使われ、楽曲の感情がよりダイレクトに伝わってきます。
例えば「The Smile Man」のサビでは、グウィンプレンの顔の震えや涙が音楽とシンクロし、観客の感情移入を一層高める演出がされています。
舞台のダイナミズムと映像の緻密さ、どちらも異なる魅力があり、両方を観ることで作品の深みをより理解できます。
まとめ:『笑う男』が音楽で描いた感情
韓国ミュージカル『笑う男』は、音楽そのものが物語の語り部として機能している作品です。
単に感情を添えるBGMではなく、登場人物の心情を内側から浮かび上がらせる“感情の声”として各楽曲が設計されています。
「The Smile Man」に込められた苦悩、デアとのデュエットに宿る愛、ウルシュスの孤独な叫び——それぞれが1つのドラマとして心に響く名曲です。
また、舞台版と映像版の違いによって、同じ楽曲でもまったく異なる印象を受けるのも、本作の奥深さを物語っています。
どの演者・どのバージョンであっても、『笑う男』の音楽は心の深層に訴えかける普遍的な力を持っています。
ぜひ一度、楽曲ひとつひとつに耳を傾けながら、この物語の本質を味わってみてください。
この記事のまとめ
- 『笑う男』は音楽で感情を語る作品
- 名曲「The Smile Man」は主人公の心情を象徴
- 演者ごとの解釈で印象が異なる
- 映像版では音響・演出に新たな魅力が加わる



コメント