山田裕貴＆古田新太のW主演が描くベートーヴェンと秘書の関係

映画『ベートーヴェン捏造』では、山田裕貴と古田新太がW主演を務め、天才音楽家ベートーヴェンと彼を“捏造”した秘書との関係が描かれます。

原作は、19世紀ウィーンで起きた“音楽史上最大のスキャンダル”に迫るノンフィクション作品『ベートーヴェン捏造 名プロデューサーは嘘をつく』。そこに、秘書シンドラーという男のゆがんだ愛と情報操作の真実が潜んでいました。

脚本はバカリズム、主演に山田裕貴・古田新太という最強コンビが集結。二人が紡ぐ“真実と嘘の境界”とは――？ベートーヴェンと秘書の関係を軸に描かれた物語の魅力を見ていきましょう。

1. ベートーヴェンと秘書“シンドラー”の歪んだ愛とは

19世紀ウィーン、耳の聞こえない天才作曲家ベートーヴェンと、その傍らで献身的に仕えた秘書アントン・シンドラー。

しかしこの関係は、表面上の忠誠心だけでは語り尽くせない“歪んだ愛”によって成り立っていました。

映画『ベートーヴェン捏造』では、彼らの複雑な感情と情報操作の裏側が赤裸々に描かれます。

・“聖なる天才”のイメージを捏造したシンドラーの真意

シンドラーは、史実として残る膨大な書簡や記録を改ざんし、ベートーヴェンを“高潔で純粋な天才”として後世に伝えました。

その行動は、単なる名誉保護ではなく、彼自身の存在意義を保つための自己投影でもあったのです。

ベートーヴェン像の多くはシンドラーの筆によるものであり、その一部は意図的に脚色されていた。

・下品で小汚い“本物”の姿を守りたい、秘書の葛藤

実際のベートーヴェンは、癇癪持ちで衛生観念に乏しく、時に人を罵倒することもあったと伝えられています。

シンドラーはその“人間臭い天才”の姿を世間から隠し、理想像を作り上げることで、彼を歴史上の偶像へと変えました。

この行為は、尊敬と依存、そして愛情が入り混じった危うい感情の産物だったのです。

2. 山田裕貴が体現する“愛が暴走する秘書”シンドラー像

シンドラー役の山田裕貴は、従来の“忠実な秘書”像を覆す複雑な人物像を作り上げました。

彼の演技は、敬愛と支配欲が同居する歪んだ愛をリアルに表現しています。

観客は、シンドラーの行動を単純に善悪で割り切れないと感じるでしょう。

・山田が語る「歪んだ愛を正義だと勘違いする現代にも通じる話」

山田はインタビューで、「シンドラーは自分の信じるベートーヴェン像を守ることが正義だと信じている」と語りました。

これは現代社会でも見られる、自分の価値観を絶対視し、他者をその枠に押し込める行為に通じます。

山田「その正義感が暴走すると、愛も歪んでしまう。それがこの役の面白さ」

・“本当にキモい”と言われた独特の役作りと演出の裏側

監督や共演者から「本当にキモい」と評された山田の演技は、徹底した役作りの賜物です。

口元の動きや視線の泳ぎ方、距離感の詰め方まで研究し、生理的な違和感を与える存在感を作り上げました。

この不気味さこそが、ベートーヴェンとシンドラーの関係をより濃密かつ危険なものに見せています。

3. 古田新太演じる“天才ベートーヴェン”の肖像

古田新太は、天才作曲家ベートーヴェンの激情と繊細さを併せ持つ人物像を体現しました。

彼の演技は、単なる音楽の巨匠ではなく、一人の人間としての弱さや滑稽さまでも描き出します。

その存在感は、シンドラーとの関係性に緊張感とユーモアを同時に生み出しています。

・癇癪持ちで情緒不安定、それゆえに天才だったベートーヴェン

史実によれば、ベートーヴェンは耳が聞こえないという大きなハンデと、度重なる体調不良に苛まれていました。

古田はその背景を踏まえ、感情の振れ幅が激しい人物像を演じています。

古田「不安定さこそが彼の創作の原動力だったのかもしれない」

・シンドラーとの会話劇が生む“人間としての魅力”とは

ベートーヴェンとシンドラーのやりとりは、時に漫才のように軽妙で、時に突き刺さるほど切実です。

古田の演技がもたらす飄々とした余裕は、シンドラーの必死さと対照的で、その落差が物語をより立体的にします。

結果として、観客はベートーヴェンを“歴史的偉人”ではなく、“隣にいそうな人間”として感じられるのです。

4. バカリズム脚本×関和亮演出が生む“ユルく切ない会話劇”

脚本を手がけたバカリズムは、史実に基づきながらも、鋭い視点と独特のユーモアで物語を紡ぎました。

演出の関和亮は、その脚本のリズムを活かしつつ、映像的な遊び心と切なさを両立させています。

二人のタッグが生み出す世界観は、音楽史上のスキャンダルをぐっと身近なものに変えました。

・“ご近所感満載”の会話劇で描く音楽史最大のスキャンダル

ベートーヴェンとシンドラーの関係は、世界的音楽家と秘書という距離感を超え、まるで隣人同士のようなやりとりで描かれます。

その親密さと息の合い方が、物語をただの史劇に終わらせず、人間ドラマとして成立させています。

バカリズム「重厚な歴史劇より、くだらない話の中に人間性が見える方が面白い」

・背景3DCG × バーチャルプロダクションによる19世紀ウィーンの再現

本作では、最新技術を駆使しバーチャルプロダクションで19世紀のウィーンを再現。

背景3DCGとリアルセットを融合させることで、役者が自由に動き回れる臨場感を実現しました。

結果として、観客はあたかもその場に居合わせたかのような没入感を得られます。

5. 山田裕貴＆古田新太、W主演の化学反応

山田裕貴と古田新太のW主演は、キャラクターの関係性だけでなく、俳優同士の相性の良さが物語の厚みを増しています。

二人の芝居は、衝突と共鳴を繰り返しながら唯一無二の化学反応を生み出しました。

その関係は、劇中のベートーヴェンとシンドラーそのもののように、時に愛おしく、時に危ういのです。

・“かわいい奴”と称された山田への古田の信頼と絶賛コメント

古田は撮影中、山田のことを「かわいい奴」と評し、その演技力と役への没入ぶりを高く評価しました。

これは単なる社交辞令ではなく、現場で築かれた確かな信頼関係の証です。

古田「この作品のシンドラーは山田じゃないとできなかった」

・撮影中のエピソードやメイキングから見える二人の絆

メイキング映像では、シリアスなシーンの合間に笑い合う姿や、演技の方向性を熱く語り合う様子が映し出されています。

そうしたやり取りが、劇中の絶妙な掛け合いとリアリティにつながっています。

観客は、スクリーンを通してその固い絆を感じ取ることができるでしょう。

まとめ：「ベートーヴェンと秘書の関係」が照らす“真実と嘘の境界”

映画『ベートーヴェン捏造』は、単なる歴史映画ではなく、人間の感情の複雑さに迫る物語です。

ベートーヴェンとシンドラーという二人の関係を通じて、愛と執着、真実と嘘の境界が鮮やかに浮かび上がります。

その境界線は、時代を超えて現代の私たちにも深い問いを投げかけます。

シンドラーが残した改ざんされた記録も、ベートーヴェンの癇癪や弱さも、どちらも彼らの生きた証です。

観客はこの作品を通じて、人はなぜ真実を装飾しようとするのか、その行為は愛なのかエゴなのかを考えさせられるでしょう。

そして、W主演の山田裕貴と古田新太が生み出した濃密な関係性は、その問いをより切実なものとして響かせます。