この記事を読むとわかること
- 『愛はステロイド』予告編の注目ポイント
- 愛と暴力が交錯するテーマの深掘り
- ジャンルを超えた映像表現と演出の魅力
映画『愛はステロイド』の予告編が公開され、映像からはクィア・ロマンスと暴力、そして陶酔的な力の葛藤が一瞬で伝わってきます。
1989年のアメリカを舞台に、ルー(クリステン・スチュワート)と野心的なボディビルダー・ジャッキー(ケイティ・オブライアン)の運命的な出会いが、次第に犯罪と暴力の渦へと巻き込まれていく予感に満ちているのです。
この記事では、予告編から浮かび上がるテーマと見逃せない注目ポイントを明瞭に解説します。
1. 『愛はステロイド』の予告編が描く“愛と暴力の暴発”
2025年8月公開の映画『愛はステロイド』の最新予告編が発表され、その内容は衝撃的なまでに“愛”と“暴力”の交錯を描いています。
一見ロマンスに見える出会いが、瞬く間に犯罪の渦に巻き込まれていく様子は、ただの愛の物語では終わらない強烈なテーマを感じさせます。
映像を通して浮かび上がる「暴力的な愛」「壊れていく絆」「逃れられない運命」といったキーワードが、観る者の胸に迫ってきます。
物語の舞台は1989年、アメリカ・ニューメキシコ。
ジムで働くルーと、ボディビルダーを目指して町にやってきたジャッキーの出会いから物語は始まります。
ふたりの間には瞬時に惹かれ合う感情が芽生えますが、その“愛”は、犯罪と暴力の引き金となってしまうのです。
ルーの家族には、姉にDVを繰り返す義弟や、警察すら支配する犯罪者の父が登場し、彼女の背景に深い闇を感じさせます。
ジャッキーはそんなルーを守ろうと行動しますが、その選択が二人を予想もしなかった犯罪の道へと引きずり込みます。
彼女たちが望んだ平穏は、すでに壊れ始めていたのです。
さらに物語を加速させるのが“ステロイド”の存在。
ルーの勧めで使用を始めたジャッキーは、肉体が変化していく一方で、精神的にもコントロールを失っていく様子が描かれます。
予告編ではその様子が徐々にスリラーのような緊迫感を持って描かれ、愛の形が暴力へと変質していく怖さが浮き彫りになります。
このように、ただの恋愛映画ではなく、倫理・暴力・依存・解放といった重厚なテーマが複雑に絡み合った作品であることが、予告編からも明確に感じられます。
だからこそ、『愛はステロイド』は“ロマンス”という言葉では語りきれない、心と体に問いかけるスリラーとして注目されているのです。
次のセクションでは、この予告編から見えてくる映像表現とジャンルの横断性について詳しく見ていきましょう。
2. ジャンル横断のA24らしさ—映像から読み解く作風と演出
『愛はステロイド』の予告編を観て真っ先に感じたのは、A24らしいジャンルの枠を飛び越えた作風でした。
単なるロマンスやクライムではなく、ノワール、スリラー、ラブストーリー、果てはホラーの要素まで織り込まれており、観客の感情を予測不可能な方向へと導きます。
この挑戦的な構成こそ、A24が世界中の映画ファンから支持を集める理由の一つです。
本作の監督であるローズ・グラスは、前作『セイント・モード 狂信』でもジャンルを超えた演出で話題を呼びました。
今回の『愛はステロイド』でも、デビッド・クローネンバーグを彷彿とさせるボディ・ホラーや、デビッド・リンチのようなシュールレアリズムが随所に散りばめられており、圧倒的な視覚的インパクトを与えます。
それがただの視覚表現にとどまらず、キャラクターたちの内面の歪みや暴力性を象徴的に描く手段として機能している点も見逃せません。
映像からは、ラスベガス郊外の乾いた空気感、人工的なトレーニングジムの光、そしてステロイドにより増幅されていく筋肉と精神の緊張が、完璧に調和した演出で描かれているのが伝わります。
こうした画作りは、物語のリアリティを支えるだけでなく、観客を“異様な世界”に引き込む没入感をもたらしています。
とくにロマンス編予告では、愛の甘さが暴力に変質していく瞬間の演出が、目を背けたくなるほどリアルで強烈です。
また、ルーとジャッキーの距離感の変化を、映像のトーンや音響で繊細に表現している点も秀逸です。
予告編の前半では明るく、開かれた空間の中で交わされる視線と触れ合いが映されますが、後半では密閉された空間や陰影の強い映像に変わり、ふたりの関係性が不穏に歪んでいく様子がビジュアルでも表現されています。
この視覚と言葉のバランスが、A24の映画に共通する“映画的体験”として、観る者を引き込んで離しません。
まとめると、『愛はステロイド』は単なるストーリーではなく、ジャンル、演出、映像、音響のすべてで観客の感性を揺さぶる挑戦的な作品です。
次のセクションでは、この映画の中核とも言える“クィア・ロマンス”という視点と、それが描く世界観の広がりについて掘り下げていきます。
3. 期待高まる“クィア・ロマンス・スリラー”の世界観
『愛はステロイド』の核心にあるのは、“クィア・ロマンス”という視点から描かれる愛の形です。
従来の異性愛的なロマンスとは異なり、本作は同性愛、トラウマ、依存、そして暴力を交えながら、多層的な人間関係と心理のゆらぎを丁寧に描いています。
それがスリラーというジャンルと融合することで、極めて濃密で破壊的なドラマへと昇華されているのです。
主人公のルーとジャッキーは、互いの傷と欲望に惹かれ合いながら、“逃れられない運命”に突き動かされていきます。
ルーは犯罪一家に生まれ、暴力に囲まれて生きてきた背景を持ち、ジャッキーは自らの肉体と夢に執着する元ボディビルダー。
彼女たちの間には一瞬の輝きがあるものの、それは徐々に壊れていくことが予告編からも見て取れます。
このようなクィアな視点のロマンスが、“現実の痛み”を描く手段として機能している点が、A24らしい表現手法と言えるでしょう。
一方で、本作はそれを“特別扱い”することなく、愛の普遍性と危うさを浮かび上がらせることに成功しています。
それが、観る者にとって非常にリアルで共感可能な作品となっている理由でもあります。
さらに特筆すべきは、本作がすでに世界的な評価を受けている点です。
Rotten Tomatoesで94%フレッシュという驚異的なスコアを記録し、第74回ベルリン国際映画祭への出品、44の映画賞へのノミネートと、映画としての完成度とテーマ性の高さが世界で認められています。
また、ジョン・ウォーターズが「2024年最高の映画」と断言したことも、映画ファンにとって無視できない注目ポイントです。
単なるLGBTQ+映画という枠を超えて、“生々しく、壊れていく愛”の物語として描かれる『愛はステロイド』。
観客はこの予告編を通じて、社会的抑圧、暴力、夢、そして自己破壊の果てにある真実の感情に触れることになるでしょう。
いよいよ次は、予告編の中で描かれている“見逃せない見どころ”を、具体的に整理してご紹介します。
4. 『愛はステロイド』予告編から注目すべき見どころまとめ
予告編を通して浮かび上がる『愛はステロイド』の最大の魅力は、ロマンスの裏に潜む“破壊的な暴力と現実性”です。
タイトルにある“ステロイド”は象徴的に使われており、肉体と感情の“過剰さ”や“逸脱”を体現するものとして映像に強烈な印象を与えています。
ここでは、予告編で明らかになった注目ポイントを整理しながら、作品が提示する核心に迫ります。
まず注目したいのは、“ステロイド”という存在が愛を歪めるきっかけとして描かれている点です。
ルーがジャッキーにステロイドを勧めたことで、彼女の肉体は増強され、精神も暴力性へと変化していく様が印象的に映されています。
これは単なるドラッグの比喩ではなく、愛の名のもとに破壊されていく自己の象徴とも言えるでしょう。
また、暴力的な家庭環境や支配的な父親など、社会的な抑圧や構造的暴力がふたりの関係に暗い影を落としています。
特に、警察すら支配する父を前に、ジャッキーが“制裁者”となってしまう展開は、愛が倫理の境界を越えてしまう瞬間を示しています。
予告編ではその転換点が、緊迫した映像と共に強烈に描かれており、観る者の感情を揺さぶります。
視覚的な演出にも注目です。
ラスベガス郊外の乾いた空気、フィルム・ノワール調の陰影、シュールで幻覚的な映像処理などが多用されており、感情の揺らぎと暴力の蓄積を美学的に描いています。
これらの演出が、物語の重みとスリルを視覚的に高める重要な要素となっているのです。
最後に、映画の公開情報についても確認しておきましょう。
- ロマンス編予告公開日:2025年8月3日
- 特別映像公開日:2025年8月20日
- 劇場公開日:2025年8月29日(全国ロードショー)
こうしたプロモーション展開のテンポの良さも、A24の“話題性作り”に対する徹底ぶりを感じさせます。
予告編だけでここまで物語の緊張感と映像美を感じさせる作品は稀有であり、8月29日の公開が非常に待ち遠しいと言えるでしょう。
この記事のまとめ
- 映画『愛はステロイド』の予告編が公開
- クィア・ロマンスと暴力の融合が描かれる
- ステロイドが愛と暴力を加速させる象徴に
- ジャンルを超えたA24らしい映像と演出
- 映像美と音響で感情の暴走を表現
- クィア視点の愛が社会構造と交差する
- 世界的な映画賞でも高い評価を獲得
- Rotten Tomatoesで94%フレッシュ評価
- 2025年8月29日全国ロードショー公開
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